ChatGPTをそのまま生徒に渡す前に、先生が整理しておきたい4つのこと
「うちの学校でも生成AIを使っていくことになった」。ここ数年、先生方からこの種の相談を受けることが本当に増えました。校務での活用から始まり、いよいよ授業で生徒に使わせる段階になって、多くの先生が同じところで立ち止まります。何をどう決めてから配ればいいのか、が分からない。
禁止し続ける選択肢が現実的でなくなった今、問いは「使うか使わないか」から「どう使わせるか」に移っています。この記事では、汎用AIをそのまま教室に持ち込む前に整理しておきたい論点を4つにまとめます。
論点1: 何のために使うのかを、1文にする
いちばん大事で、いちばん飛ばされがちな工程です。「生徒がAIを使えるようになるため」は目的として弱すぎます。道具の習熟は結果であって、目的にはなりません。
たとえば探究の授業なら、「一人で手が止まる時間を減らし、考えながら進んでいる状態を作るため」のように、授業のどの問題を解決したいのかを1文で言えるようにしておく。この1文があると、後述のルール決めも、学期末に「効果があったか」を振り返るときも、すべての判断の基準になります。
論点2: 「丸投げ」の線引きを、先に決めておく
導入後に必ず起きるのが、成果物の丸投げです。「レポートの結論を書いて」と入力すれば、AIは書いてしまいます。起きてから対処するのではなく、線引きを先に生徒と共有しておくことをおすすめします。
- 情報の検索や整理など、作業の負担を減らす使い方はよい
- 考えの言語化は、AIに促されながらも自分でやる
- 成果物の文章は、最終的に自分の手で書く
線引きの正解は学校や授業によって違います。大切なのは、先生の中で基準が決まっていて、生徒に説明できることです。文部科学省のガイドラインも、生成AIの output をそのまま自分の成果物とすることの問題を指摘しています。学校としての方針文書がある場合は、授業のルールをそこに接続しておくと保護者への説明もしやすくなります。
論点3: 何を入力してよいかのルール
意外と抜けやすいのが入力側のルールです。生徒は悪気なく、自分や友人の氏名、学校名、身の回りのトラブルの詳細をそのまま入力します。
- 自分や他人の氏名・住所・連絡先は入力しない
- 友人関係など、他人が特定できる相談は内容をぼかす
- 「入力した内容はどこに送られ、何に使われるのか」を一度は確認する
3つ目は、そのままデジタル・シティズンシップの教材になります。利用するサービスのプライバシーポリシーを生徒と一緒に読む時間は、遠回りに見えて確実に効きます。
論点4: 「答えを断定する」という性質を、先に教える
生成AIは、知らないことでも、もっともらしい文章で断定的に答えます。実在しない参考文献を挙げることもあります。この性質を知らないまま使い始めた生徒は、AIの答えを「調べた結果」として扱ってしまいます。
導入の最初の時間に、AIが間違える実例を見せてしまうのが効果的です。「AIの答えは、解答ではなくそのAIの回答である」という一点だけでも、最初に共有しておく価値があります。
汎用AIか、教育用に設計されたAIか
ここまでの4つの論点は、どのAIを使う場合でも必要な整理です。そのうえで、道具の側の選択肢もあります。汎用AIは何でもできる分、丸投げの線引きも答えの断定への対処も、すべて運用のルールで縛ることになります。一方、教育用に設計されたAIは、そうした振る舞いを設計の側で最初から制約しています。
私たちが開発している「らいくん」は後者の立場で、答えを断定せず問いを返すこと、成果物を代筆しないことを対話設計そのものに組み込んでいます。どちらが正解ということではなく、「運用で縛るのか、設計で縛られたものを選ぶのか」という選択肢が今はある、ということを知っておいていただければと思います。